PCMの種類と特性-パラフィン系・水和塩系・バイオPCMの違い

■概要

省エネや温熱環境の改善に役立つ「潜熱蓄熱材(PCM)」。近年は建材、物流、空調など幅広い分野で活用が進んでいます。しかし、PCMと一口に言っても、パラフィン系・水和塩系・バイオPCMの3種類は性質が大きく異なります。今回は、それぞれの特徴と選び方のポイントを3つのテーマで整理します。

■テーマ①:パラフィン系PCM-安定性と扱いやすさが魅力

パラフィン系PCMは、炭化水素を主成分とした最も一般的なPCMです。化学的に安定しており、相変化の繰り返しによる劣化が少ないため、長寿命で扱いやすいのが特徴です。また、過冷却がほとんど起きないため、安定した蓄放熱性能を発揮します。建材や定温輸送、空調用途など、幅広い分野で採用されています。

■テーマ②:水和塩系PCM-高い蓄熱量とコストメリット

水和塩系PCMは、無機塩の水和物を利用したタイプで、パラフィン系よりも高い蓄熱密度を持つのが最大の強みです。比較的安価で、限られたスペースでも大きな蓄熱効果を得られるため、空調システムや産業用途で重宝されています。ただし、過冷却が発生しやすい点や、長期使用で相分離が起こる可能性があるため、安定化技術や添加剤による対策が不可欠です。

■テーマ③:バイオPCM-持続可能性と安全性を両立

近年注目されているのが、植物由来の脂肪酸を利用したバイオPCMです。再生可能資源を原料とするため環境負荷が低いものも多く、物流や医療分野での利用が広がっています。パラフィン系に近い安定性を持ちながら、よりサステナブルな選択肢として評価されています。ただし、コストはやや高めで、用途によっては経済性とのバランスを検討する必要があります。

■まとめ

パラフィン系・水和塩系・バイオPCMの3種類は、いずれも「温度を一定に保つ」という目的は同じですが、その特性や適した用途は大きく異なります。安定性と扱いやすさを重視するならパラフィン系、限られたスペースで高い蓄熱量を求めるなら水和塩系、環境配慮や安全性を優先するならバイオPCMが有力な選択肢になります。どのPCMが最適かは、求める温度帯、コスト、耐久性、環境性など、プロジェクトごとの優先順位によって変わります。今回の比較が、製品選定や新規企画の検討に役立ち、より快適で効率的な温熱環境づくりのヒントとなれば幸いです。

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